前回のコラムで、近代日本画壇の巨匠、横山大観は、天性の飲兵衛ではなく、酒豪(日に2升)の師匠、岡倉天心より、「酒の一升くらい飲めずにどうする」と叱咤され、飲んでは吐きながら大成しました・・・と書きましたが、この記載は科学的には正しくないところがあります。

酒の主成分「エチルアルコール」は、肝臓で、アルコール脱水素酵素(ADH)によりアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(主としてALDH2)により酢酸に変化し、最終的には二酸化炭素(炭酸ガス)と水に分解されます。

悪酔いの要因となるのは、アセトアルデヒドの蓄積であり、これを主として代謝するALDH2の、 487番目のアミノ酸をコードする、たった一つの塩基配列組み合わせの違いにより、「GG:酒が強い」「AG:酒が弱い」「AA:酒が飲めない」のいずれかとなります。

実は、大量にアルコールを摂取した場合、ミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)が働きます。飲み慣れるとこの酵素は、量的に増加します。

大観は、もともと酒が強いGGタイプのアルデヒド脱水素酵素保有者であり、さらに、師匠の天心の薫陶を受け、MEOSを増やしたと推察されます。

大観は、酔心を主食として、こよなく愛飲しました。「私は大酒呑みではなく、ただ酒を愛するだけです。酒徒という言葉がありますが、私はそれだけです」

酔心